調理師免許を取ったらどんなメリットがあるのでしょうか。
私は高校の調理科卒で免許を取得しましたが、その後20年近く経ちました。15年くらいの調理の仕事の中で7回以上の転職をしています(すぐ辞めたところを入れると15くらい…)。
その経験から転職等でどのくらい役に立つのか、ということを中心に調理師免許の価値をまとめました。
飲食店では0%、給食業界では100%
私が見てきた中では飲食店で要調理師免許という応募先は一つもありませんでした(尚良しくらいならあったかも)。入った後も持っているということで何か評価されたことは一度もありません。
履歴書には書きますが面接時に話題になったことはありません。もしかしたらひそかに”免許持っているのか…”とは思われているかもしれませんが、明らかにプラスになったという感じは一ミリもありませんでした。
以前ホリエモンが”調理師免許なんか意味ないからいらん”的なことを言って物議をかもしましたが、腕の証明にならないという意味では100%正しいです。その証拠に飲食店の採用で評価対象になることは0%でした。
一方これまで私が応募した給食の仕事はすべて応募条件が要調理師免許でした。どこも免許がなければ働けなかったという意味で免許の価値は100%でした。(”私が応募した中では”なので、この条件がない求人もあるかもしれません。)これは調理師試験や免許制度が食品衛生面などの基礎知識に比重を置いているから、というのが一つにあります。給食で一番重要なのは何よりも衛生です。
でも入社したらみんな栄養士か調理師を持っているのでまったく差別化にもならないですし、もちろんなにか評価にはならないです。
パートの場合は会社によります。知り合いの病院給食パートの方の話だと免許を持っていると時給が少し高くなるということでした。でも私がいた会社では免許を持っているからといって時給に差はつけていませんでした。
ちなみに調理師の上位資格で専門調理師というのがあります。6ジャンルあって、私は給食用特殊料理専門調理師というのを取りましたが、残念ながらこれは調理師免許に輪をかけて意味がありませんでした。
給食の会社に応募した時に履歴書に書いたら「何ですかこの資格?」と尋ねられたことがあります。その程度のものです。(※ただし下の記事にいただいたコメントでは、専門調理師に対して評価する会社もあるようです。)
日本料理とか他の専門調理師は給食よりは価値があると感じます。実技試験も給食と違って専門技術的な内容です。ただ試験課題だけ集中的に練習すればいけそうなので、腕の証明という意味ではあまり評価されないのではないでしょうか。
では調理学校卒はどうか?
調理師資格に関連して、調理の学校を出ていることには意味があるか、について。(※ふつう調理の専門学校や高校を卒業すると試験を受けずに調理師免許が取れる。)
私の場合高校の調理科卒ということで評価されたことはありません。むしろ高卒がネックになったことが少しあります。飲食関係の会社でも仕事やポジションによっては専門卒、大卒とされていることもあるからです。
おそらく調理の専門学校卒も「学歴:専門卒以上」という条件を形式上クリアするために効果を発揮することはあっても、中身のある評価対象にはならないでしょう。調理学校に行く意味の一つに就職先のあっせんがありますが、その後の転職ではほぼ無意味です。
でも個人的には学校でじっくり調理の基礎知識を学べたこと自体は無駄じゃなかったと思っています。もし独学で免許を取っていたら、ギリギリ合格するためのその場しのぎの勉強になってしまい、知識が身にならなかったでしょう。
では他に役立った場面は?
ここまで見てきたように調理師免許を持っていて給食以外の転職で役立ったことはありません。飲食店で評価されるとしたらたまたまオーナーや先輩が資格を重視するタイプだったという場合でしょう。でもその確率はかなり低いと思われます。
ただ資格の価値は転職で役に立つかどうかだけではない(と思いたい)です。ということで持っていてよかったなという点を日常生活から挙げてみます。
衛生・栄養面の知識は役に立っている(かも)
調理師試験で学んだこと(=私の場合は学校の授業)は意外と役立っている気がします。主に調理以外の分野ですが。
例えば栄養学で必須アミノ酸、アミノ酸スコアとかの概念。これが具体的に役に立っているわけでもないのですが、食品裏の成分表示とか見たときに概念くらいはイメージできる安心感(なんとなく)があります。他にも流行のダイエットとか健康法がどう考えても偏っていておかしいな、みたいな感覚は持てるのでやはり基礎知識って大切だなと思います。
衛生面でも例えばブドウ球菌のおそろしさとかなんとなく意識しているので、弁当作るとき無駄に手で触らないとか気を付けています。公衆衛生で感染症の基本なども学んだのでそういったニュースが身近に感じられるのもよかったです。
ぜんぶなんとなくですが、日常生活のなんとなくは意外と大事かも。
周りからみて専門家と思われる(場合も)
業界外や雑談でたまに評価されることがあります。
雑談のなかで調理師免許いいな~的なことを言われたことは3~4回くらいあったような気がします。料理が好き、憧れみたいなものを持っている人にとっては、素敵な資格に映ることがあるようです。またお世辞の場合、たぶん褒めるほうとしても”資格持っていてすごいですね”とわかりやすく褒められるので便利でしょう。
あとはこういうブログなどで情報発信するときに”あ、その道の人が書いているんだな”という風に見てくれる人もいるかもしれません。
おそらく業界内で自分が取得している人ほど、調理師を持っていても何も変わらないという事実を知っているので価値は感じません。でも業界外から見ると専門家的に見てもらえることが少なくありません。調理師=料理ができると思われています(良くも悪くも)。どうもペーパー試験だけで、しかも料理の作り方以外の出題が多いという事実は認知されていないようです。
自分の中の安心感と満足感
転職や進路について「何も資格を持っていないし…」という悩みをよく目にします。その意味ではなんとなく資格持っていてよかったなと感じます。すでに述べた通り給食系以外では評価されないのでただの精神安定剤ですが。
あと私の場合15年以上料理していますが、いろんな職場を中途半端にやってきただけなので、調理師免許という目に見える何かがないと自信がさらに無くなるというのもあります。職人ではないけど一応は手に職があることの目に見える証明、的な感じです。
あと完全に資格マニア的な思考ですが、持っている国家資格の数としてカウントできる自己満足があります。
なんだか書いていたら現実的過ぎて悲しい感じになってきたのでこのくらいにしようと思います。ではまとめ。
調理師免許の価値まとめ
- 飲食店で評価されることは100%に近いくらい無い
- 給食業界では100%に近いくらい必要だったりする(パートでも時給が上がるかも)
- 私生活で知識が役立つことが少しだけある
- 周囲からの評価や自分の中での満足感はたまにある
調理師試験については以下も書いていますので良ければ参考にしてください。
食に関する他の資格についてのまとめ記事は以下からどうぞ。
コメント
コメント一覧 (2件)
同感です。
勘違いしてる人が多いですが、日本の調理師免許は「衛生法」ですから、それがないとコックさんになれないとか、お店が出来ないとか、そんなことはありません。
無い人は「食品衛生」の講習を受ければ、同等の資格になります。
現実、高級店であればあるほど、調理師免許より、技術、どんなお店で修業してきたか?を優先します。
逆にいうと、調理師免許を持ってるから仕事が出来るという図式はなく、資格は資格、技術は技術ということになります。
私も同様にホテル、レストラン等で勤務しましたが、調理師免許持ってる?的な面接はなかったし、確認すらされたことはなかったです。
但し、和食のフグ免許だけは実技試験ですので価値はあると思います。
>たけさん
実体験に加え簡潔に要点をまとめてくださってありがとうございます。
このコメントを記事の冒頭に持ってきたいくらいわかりやすいです。
(業界外の方に伝えるにはこう書いたほうがいいなと勉強になりました。)