私は「会食恐怖症」だったらしい

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テーブルに並べられたたくさんのグラスと皿。

けっこう前ですがNHKの番組で「会食恐怖症」という名称を知りました。そして驚きました。「あ、これ自分もなったことがある」と。

人生常にこうだったわけじゃないですが特にここ数年症状が出るときははっきり出てました。また昔からみんなで食べるごはんが苦手でした。自分だけだと思っていたのでちゃんと命名されていたのか、同じような人がいたのか、という驚きがありました。

この問題、ググっても情報がまだまだ少ないようです。せっかくブログやっているので当事者として思うところを書くことにしました。

ただ私自身は後述するように今はこの問題で悩んでいません。だから克服したいとかこの症状を広く知ってほしいみたいな気持ちはあまりありません。学校給食の完食指導で発症してずっと苦しんできた人と比べたら軽度なので言えることもあまりないです。ただ逆にわりと軽度で大して悩んでもいない人の情報もあってもいいのではないかと。なるほどこんな人もいるのか程度に参考にしてもらえたらと思って書きたいことを書いていきます。

目次

私の症状レベルと発症のきっかけ

今はもしかしたら症状が出ないかもしれません。コロナ禍以降、人と外で食事することがなくなったので現状は不明です。

でも今も誰かと食事するという場面を想定すると、真っ先に考えてしまうのはやはりこの問題。気持ち悪くならないだろうか、全部食べられるだろうか。

あるいはどうやって本格的な食事を避けようか、特に一人分がはっきりしている食事は避けたい、というのはあります。

本来ならどんな場がいいか、どんな食べ物が喜ばれるか、みたいなことを考えるべきなのに、真っ先に考えてしまうのは自分が「食べられる」かどうか。

こんな思考回路が消えない限り私は会食恐怖症なのでしょう。

これまでの私の進行度合いは3段階にすると説明しやすいです。

1.子供の頃から

私はもともと会食や飲み会でおなか一杯食べたとかじっくり味わったとかあまり記憶にありません。つまり子供のころから会食的な場では食欲はない感じ。

給食は総じて問題なく食べていましたが、小学校の給食の時間はかなり苦痛でした(1年生時は登校拒否気味だった。つまり学校じたい馴染めていなかった)。食べることそのものではなく同級生との会話があるということ、班の形式で食べること。HSP(HSC)も関係あると思っています。※HSP…敏感で繊細な性格特性。HSCはそういう子供のこと。

コロナ禍で今は前を向いて無言で食べるようですが正直とてもうらやましいです。「孤独のグルメ」みたいな食べ方だと一番幸せです。

2.大人になってから

その後大人になってからはあまり意識していませんでした。

人との外食などで軽めの嘔吐感があるほどの拒否反応も何回かありましたがそれほどひどくはなく、何とか完食かそれに近いくらいまではいけていました。全部は食べられなくても半分以上とか、まあ見た目ごまかしはきく程度まではなんとか持っていく、という感じ。

またそもそも発症の頻度は少なったです。

ただはっきり自覚していたのは会食的な場では食欲が半分以下に落ちるということです。とりわける形式の場合、量をほとんど食べないので終わった直後に空腹を感じて何か食べたくなるというのはいつものことでした。

3.強い症状として自覚

ここまでなら別にそこまで問題はなかったのですが、その土台の上に嘔吐感などのはっきりした反応が加わってきました。うつ病発症前後と重なるのでそれがきっかけの一つかもしれません。

当時は一人で会社の席でお昼を食べようとしても戻しそうになるほど体調を壊していました。

その頃人と食事してほぼまったく食べられないというのが数回あり、外食では「食べられなかったらどうしよう…」が先に立つようになりました。心配すればするほどひどくはっきり出てしまうという悪循環。

同僚と共に客先で打ち合わせし、その後外でランチなどの機会も月に1~2回はあり、これは避けられませんでした。ほとんど一口も食べられなかったりしたこともあり、どう言い訳したものか苦心しました。この頃については、もしかしたらうつ病が主原因なのかもしれないです。

ただ人生を振り返ると、いつ「会食恐怖症」について知ったとしても「自分はちょっとこれだな」と反応できていたはずです。ですのでもともと軽度の会食恐怖症にうつ病が乗っかって悪化したというのが自身の推測です。

発症時の状態

発症時の具体的な状態についてです。まずは一番ひどかった時について書いてみます。※会食恐怖症に無縁な人にもできるだけ伝わるように努力してみます。

まず満腹というわけではなく食べられません。最初からすでに気持ち悪い状態の時もあります。

気持ち悪さがあまりないときでも「胸がいっぱい」的な感じで、食べ物を受け付けられないです。うまく説明できないですが、物理的な位置としても胸のあたりや喉の中がいっぱいな感じです。

で、食べると「うえっ」と反射的に戻しそうになります。戻しそうな反応といってもけっこうのどの上のほうです。内臓のほうから戻ってくる感じとかじゃなく、のどのかなり上部、口のすぐ1cm下くらいが戻そうと拒否してきます。

警備で例えると入り口での受付拒否です。いっぽう食中毒のときに吐き戻してしまうのはすでに侵入してしまった不審者を発見したのでつまみ出す感じ。

受付拒否なのである意味入り口さえだましだまし突破できればなんとか入れるのです。一口一口に対していちいち受付拒否されるのですが強引にねじ込んでいきます。

なかなか飲み込めないのですが、すぐに吐き出さなきゃいけないみたいなのでもありません。ただ口に入っている状態で嘔吐感がきたり、どうしても飲み込めない場合かなりピンチです。どうしようもないので涙目になったこともありますし、口に入ったままトイレに逃げる、あるいはティッシュに出してしまう、ということも。

この場合もちろん目の前の食事について「食欲」などというものは一切ありません。あるのは少しでも減らさなければならないという義務とプレッシャーのみです。

なおその時によって症状の程度は様々です。

平均的なのは一人前の半分程度でギブ。最も重度では一口味見しただけになったこともあります。

軽度だと何回かの小さな拒否反応を上手くしのぎきってほぼ完食までもっていけたことがあります。ちなみにこれはこれで達成感がすごいので、重度で全く食べられなかったとき以上に印象に残っていたりします。こういった成功例は意外と早食いです(早食いといっても一人で早食いよりはだいぶ遅い)。時間を伸ばすほどギブになる可能性が上がるので、結構ギリギリの速度を攻めてつないで勝ち切った感じです。

会食後の生態

この記事は会食恐怖症の人以外も読んでくれているかもしれないので、会食後にどうなるのかについても簡単に補足しておきます。

さっきまで気持ち悪いとか実は体調がよくないとか言って食べなかったくせに、解散して一人になった後は空腹になるのですごい食べます。ウソついていたとかではないです。さっきは本当に胸から上がいっぱいいっぱいで気持ち悪かったけど解散したから治りました。

他の人より2時間くらい空腹時間が伸びているわけなので余計おなかすいた分食べます。本気で心配してくれた方ほんとにごめんなさい、とは思ったりしていました。

起こりやすい条件と厄介な理由

私の場合中途半端に仲よくなりかけている人たちが一番危険です。今後も引き続き、あるいはもっと仲良くなりたい人たちとでもいいましょうか。あるいは縁が切れそうもない人。

おそらく失敗を見せられない、失敗を避けたいという心理が強くなるからだろうと思います。

逆に安全なのは家族やそれと同等くらいに親しい人、また反対にどうでもよすぎる人です。前者は短所を含めて何も取りつくろう必要がないため、後者は今後もう会わないと思っているからだと思います。

つまりこの問題の厄介な点は、会食恐怖症を打ち明けられる仲だったらこの問題は起きないという点です。みんながみんなそうではないでしょうが、少なくとも私の場合は。

なお外で一人で食事するのはまったく問題ありません。※4人席で3人グループと相席にされそうになった時は注文前に退店したことはありますが。

他の要素としてはストレスや体調不良などが重なっているとかなりまずいです。自分を振り返ると症状が重度になるか軽度になるかはこれらの影響が小さくない気がするからです。

あとは揚げ物や脂っこいものはかなり危険です。とはいえこれもあくまで症状の程度に影響があるという意味で、発症するかどうかとはたぶん関係ないです。たださっぱり系や野菜などなら、飲み込むのが困難な時でも吐くような強い反応は起こりにくいのでまだ安心感があります。

「まかない」はなぜか大丈夫だった

私は以前調理師をやっていましたが、その頃の職場の昼ご飯はいわゆる「まかない」でした。

みんなで一斉に食べるところも多かったですが、この症状を起こしたことも悩んだことも一度もありません。ただ調理師当時でもプライベートの飲み会やご飯では食べられないことがありました。

まかないでは問題なかった理由として思い当たる点はあります。

一言で言うと「まかない」の時の私の意識は人:食味で1:9くらい。ほとんど食味でした。たぶんこれが大きな理由の一つではないかと思います。つまり会食では食べ物の味よりも一緒にいる「人」のほうを強く意識するから食べられないわけですが、それがなければ問題ないのです。

まかないについてもう少し補足すると…

  • まかないの場合食べること、もっと言うと短い時間で胃袋を満たすことが最大の目的という共通認識がある。会話はほんのおまけに過ぎない。
  • マナーや飲み物・注文などの気配りももちろんない。各自スピーディーに食べるのみ。
  • 私の場合職場や同僚に対しての思い入れが低い。
  • 厨房の場合どのみち普段の仕事で全部さらしているので、食事の場面であらためて何か意識することはない(取り繕えないという意味では家族に近い)。
  • 自分がまかないを作った場合、料理への評価などに意識が集中している。そうでない場合でも食べているものの評価や分析に意識が向いている。

逆に会食の場合、人との関係性や会話に意識が向いています。おそらく他の人はもっと食べ物や飲み物の味わいそのものについて考えていると思います。私がどれならなんとか食べられそうか悩んでいる一方で、楽しそうにメニュー選んだりしているわけなので。

会食の場合の私の意識は人:食味が9:1くらいです。要は意識が同席する「人」に傾くほど発症しやすいのだと思います。

単なる気の持ちようでは治らない

以前は食べられなくなるのは心理的なものだと思っていました。つまり本来自分でコントロールできるのに自爆しているだけだと。

症状が起こると「またなるんじゃないか」というのがどんどん強くなります。

また気持ち悪くなったらどうしよう…。ほとんど食べずに大量に残してしまったら変に思われるんじゃないか…。これが頭の中にうごめいているので逃れられなくなっていく…。考えるからなおさらひどくなっていく…。

でも振り返ってみると必ずしもそうでもないようです。つまり他のことや会話で頭がいっぱいでも、なるときはなっていました。気の持ちようだからコントロールできるはずって思っていましたが、やっぱりできないというのが今の結論です。

この問題は自分の行動や意識で克服を目指すとしたらかなり厄介じゃないかと思います。私はあがり症なほうだと思っていますが、例えばその克服とかよりもよほど難しいです。成功体験を積もうにも体の反応そのものを制御するのって無理です。あがり症克服なら録画して客観的に見るというのは効果があるそうですがそういうこともできません。また当たり前ですが一人でいくら食べてもまったく練習になりません。本気で克服しようと思ったらやはり外部からの理解と援助は必須と思います。

私個人の根本原因を考えると自意識過剰、自己肯定感の低下とか対人恐怖的なのかな?というのはあります。ただ仮にそこから始まっていたとしても、嘔吐的な反応として出現している以上はもはや別物だと思っています。

つまり一度この症状を味わうとトラウマみたいにまとわりつかれちゃうので、その後に自意識とか対人恐怖とかを修正してもやはり症状は条件反射的に出てしまうんじゃないかと。

まあ医学や精神面などの専門家はどういう見解なのかわかりませんが、一経験者の主観ではそう感じています。

発症時の対処法

私が発症時に取っていた対処法は以下です。

状態は正直に。理由はあいまいに。

NHKの番組ではタンメンだったか…「ある程度食べた風にする」みたいな話がありました。もちろんそういう見た目を取り繕うのも考えます。定食の付け合わせの野菜を移動したりとか。

ただ本当にひどい時はそこまでもいけないので「あれ?なんか気持ち悪い。最近体調悪いからなあ」とか言ってほぼ全部残したりしてました。本気で心配されたりします。

だいたい他人から見たら体調悪いなら注文する前にわかってるだろってな話ですが、そこは「なんか食べ始めたらと気持ち悪くなった…(事実)」と。

自分では精神的なものだという自覚があるのでなんか申し訳なかったです。そして今後も全部残しに近い場合これで行くと決めています。というかこれしか取れる手段がないので仕方ありません。

他にやっておくべき準備は2つあります。

  • トイレの場所を把握…とっさの時に口に含んだまま駆け込める
  • ティッシュやハンカチをすぐに広げられる状態でポケットにスタンバイ…とっさの時に口を拭くふりをして吐き出せる

その他会食恐怖症について思うこと

ここまで私の会食恐怖症経験について書き出してみました。あまり整理せずに勢いで書いてしまったので、最後に書き洩らしたことを補足的に書いてみます。

ランチは最大の敵

基本的に夜ごはんとかよりもランチが一番怖いです。

理由は以下です。

  • たいてい一人分がはっきりしている
  • 時間制限がシビアでみんなのペースがはやい(チマチマと超地道にいく作戦不可。最大スピードで攻め切る作戦しか選択できない。)
  • そもそも会食恐怖とは関係なく朝起きてからの時間が短いほど食事で気持ち悪くなる確率は高い
  • その後一人で補給できない場合、午後の体力にひびく

一方でカフェでお茶か居酒屋の安心感は高いです。私はアルコールNGですがそれでも居酒屋(つまり料理とりわけパターン)を選びたいです。一杯も飲まないくせに居酒屋を提案したい場合どうすればいいのだろうか?というのは常々思っています。

おごりのプレッシャー

かなり困るケースがあります。おごりです。

おごられるのは本当に困ります。先におごり宣言はプレッシャーがすごいですし、後からの場合は申し訳なさが半端じゃないです。

仮に全部完食できたとしてもおごりというプレッシャーがあると味は砂になる危険すらあります。キモをフォアグラにされるガチョウってこんな気分なのだろうか…的な。

お気持ちはありがたいですしお財布的にもうれしいですが、それ以上にピンチです。

そういえばおごりたい場合も困ります。おごっているくせに自分は残しまくる人って謎すぎるからです。

周りの人から絶対にされたくないこと

私が特別一個だけ強く言いたいのは「こちらの意思も確認せずに勝手におかずとかご飯とかくれないでくれ」です。

特に男性に対する女性陣。自分は食べきれないからって勝手に人の皿に追加するな。そもそも男だから大食いとか、男なら食べろ的な昭和なやつやめてください。思い出せる範囲でも少なくとも3回以上はありました。

百歩譲って「男のくせに小食」「たくさん食べなきゃだめよ」とかの言葉はまあいいです。愛想笑いでスルーするだけなので。ただ物理的な負担を増やすのだけはほんとやめてください。

個人的には会食恐怖症を別に理解してくれなくていいです。ただ意思確認せずに物理的に食べ物を押し付けるのだけはほんとやめてください。

まとめ:克服せずとも悩んでいない

こんな記事をわざわざ書いておきながらなんなんですが、私はこの問題について悩んでいません。克服する必要も感じていません。

会社員じゃなくなったのもありますし、もともと性格的に99%の時間を一人で過ごしたいタイプだからです。じゃあ単に会食を徹底的に避ければよいと。一人大好きな自分に正直に生きていこうと。そういう方針です。

誰かとごはんを食べるというイベント自体がマイナス80くらいの苦なので、食事で気持ち悪くなったり残して気まずいのが足されたところでそれがマイナス100に悪化するという程度。マイナスからマイナスならもういいやと。(※本当に気をつかわない相手なら症状出ないのでプラスのイベントが減点されることはない。)

あとこの問題は歳取るほど小さくなっていくというのは事実あるんじゃないかと思います。大抵は若い時みたいに友達とごはんとかそういう機会は減っていくので。まあ営業的な仕事がらみとかでいろいろある人は別ですが。

ただ変わり者の私ですらNHKに出ていた方、おそらく20代前半とかだったらしんどいだろうなあというのはよくわかります。もっとも若くてもいろいろな生き方や価値観がある時代なので、人によってはこの問題を頑張って克服するよりも徹底的に逃げたほうが幸せの総量が多いみたいなのもあるかもしれません。

今個人として思うのは今後の人生すべての食事を一人か家族だけと食べたい、その他の方とは食事以外の場で仲良くなりたいです。

あと調理師として作り手側に立って言いたいことは、こういう事情で残さざるを得ない人も中にはいますという事実。残されたからって必ずしもまずいとか食べ物を粗末にしているとかではないよってこと。

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