出刃包丁、魚をよくさばくという人はほしいと思う包丁ですね。
でも丸ごとの魚はたまに料理するだけという場合、迷うかもしれません。
この記事では、出刃包丁をはじめて買う前に考えたいポイントをまとめました。
出刃包丁とはどんな包丁?
出刃包丁とは魚をさばく専用の片刃包丁です。丸ごとの魚を料理することが多ければ一本は持っていた方がいいと言われています。なので昔はどの家庭でも出刃包丁があったようです。
刃が厚いので同じ大きさの万能包丁などと比較しても格段に重量があります。この厚さと重さを生かして魚のアラ(骨)を割ったりできます。
出刃が欲しい理由2パターン
はじめて出刃を購入するケースは大きく分けて以下の2つに分かれるかと思います(使わないけど所有したいコレクターは除く)。
- 出刃以外で魚をさばいているけどやっぱり出刃の方がいい気がする
- これから魚をさばけるようになりたいから出刃が欲しい
いずれにしても次の見出しに書いた通り必要ない可能性は高いです。
錆びたまま放置されたり、家にある割に使われない、そんな包丁といえば出刃包丁です。
子供のころのおぼろげな記憶ですが、いずれの祖父母のうちでも錆び錆びなかわいそうすぎる出刃がありました。
※現在は錆びない包丁が主流なので、使われない=錆びるわけではないですが。
出刃は魚を捌く以外にはほとんど出番はないですが、ランクはともかく包丁一本それなりの値段はします。
そもそも魚を捌くのに出刃包丁は必須か?
料理歴15年以上のうち鮮魚歴も4年ほどの私の意見ですが、家庭でさばくなら出刃包丁はほぼ必要ない!です。
アジやサバくらいなら万能包丁やペティナイフでも十分ですし、むしろやりやすいです。カツオやワラサなど中型魚だと出刃があった方が便利ですが、家庭ではほとんどやる機会はないと思います。
そもそもおろすという作業ならどんなに軽量で薄い包丁でも十分です。
三枚おろしや五枚おろしというのは、どこに包丁を入れるかわかっていれば重さや大きさ、刃の厚さは必要ないからです。
ではなぜプロは出刃包丁を使うの?となりますが、それは丈夫で楽だからです。
一日何十尾~何百尾とさばき、切り身を何百~何千切れとつくるとき包丁に求めるものは、作業が楽にできること、そして刃こぼれしにくいこと・切れ味が持続することです。出刃でないと、かぶと割りやアラの処理など骨を切るのはさすがにキツいですし、刃こぼれの可能性が段違いに上がります。これらをうまく満たしてくれる包丁が出刃包丁というわけです。
家庭の場合小型数尾~中型一尾さばくといったケースが多いので、どんな包丁でも問題はありません。
家庭の場合→魚をさばくことがあっても出刃包丁は必須ではない なぜなら量が少ないから。
まずこれを踏まえて買う前に考えて欲しいことはいろいろあります。以下。
出刃包丁を活躍させられる?
必要ないのに出刃を買って御蔵入りしてしまう、ということを避けるためにチェックしたいポイントを考えてみましょう。
そもそも魚をさばく機会がどれくらいあるか?
魚を週3~4くらいで食べている魚好きでも、切り身やサクを買うことが多いでしょう。となると出刃は週2以上で使う人は少ないかと思います。
もし仮に月1なら年に12回、10年でも120回程度です。このために6,000円の出刃を買ったら一回50円も道具代がかかっている計算です。これなら毎日使う包丁に予算を集中投下した方がお得です。10,000円未満でも家庭用としては十分な牛刀+ペティナイフのセットなどが買えます。
すでに書いた通り魚をさばくのに出刃包丁は必須ではありません。たまにしか使わない道具を買うのはもったいないです。
メンテナンスが必要になる可能性が高い
出刃が必要な魚をさばくということは刃こぼれの可能性も高いです。あらを叩いたり、かたい部分に刃をぶつけてしまうこともあります。出刃の場合、刃こぼれは大きなものだけでなく小さなギザギザがたくさんできる感じです。すると切れ味が落ちます。
どの包丁も使っていれば切れ味は落ちていくのは当然ですが、魚をさばくということは小さな刃こぼれはよくおこります。
大きな刃こぼれができてしまったら研ぎに出すとしても、小さい刃こぼれや切れ味の低下のたびに研ぎに出していたらいくらかかるかわかりません。
このように出刃というのは他の包丁に増してメンテナンスの必要に迫られることになります。自分で研ぐのか研ぎに出すのか、このことも考えておく必要があります。
もっともどのみち魚をさばく機会が多いなら他の包丁でもこの問題は起きる(むしろ刃がかけやすい)のですが、高い包丁を買ってメンテナンスしないというのが一番もったいないので書いてみました。
片刃に慣れないうちに挫折する
包丁には両刃と片刃があります。家庭の定番万能包丁は両刃ですが、出刃包丁は片刃です。
片刃というのは包丁が一定の方向に流れるという性質があります。例えば硬いものを上から切ろうとすると刃が左にすすむように感じます(右利き用の場合)。また両刃の感覚で水平にスライスしようとすると上側に流れることになります。そのため初めて片刃を使うと「あれっ?包丁がうまくコントロールできない」と感じるケースがあります。
和食の厨房など毎日使う環境だとすぐに慣れるものではありますが、家庭では普段は両刃の万能包丁です。
たまに魚をさばくときだけ片刃の出刃となると毎度感覚の違いに戸惑う可能性もあります。
すでに刺身包丁を使っていて慣れている、ということであればあまり問題ないと思います。
日本料理では薄刃包丁で修業(大根のかつらむきや野菜の刻みなど)し、最終的に刺身包丁(つまり一番上のほうのポジション)を使いこなすことになります。基本ずっと片刃をメインに使っていくのでその感覚が基本になります。ですが家庭の場合こういった他の片刃包丁を普段から使うことがないので扱いが難しいと感じるはずです。
ここまで改めてまとめるとこのようになります。
出刃デビューをおすすめできる方
- 魚をさばく機会が多い。出刃でないとキツい作業(中型魚以上のアラの処理)もする。
- 研ぎができる、これから覚えたい。
- 刺身包丁などで片刃に慣れている。これから慣れたい。
プレゼントとしてはどうか
出刃包丁は包丁名としてはだれしも聞いたことがあるはずですし、昭和生まれでしたら比較的なじみのある種類の包丁だと思います。
そんなわけでプレゼントに包丁という場合、「万能包丁は持っているだろうから他のもので」じゃあ「出刃にしよう」と思うかもしれません。ただこれはあまりおすすめできません。すでに上記に書いた通りですが、とにかく出刃というのは有名な割に使用頻度の低さと扱いにくさが圧倒的だからです。
例外は趣味が釣りの人などかもしれませんが、その場合すでに使用用途別に何本か持っているかもしれません。
昔はどの家庭にも出刃包丁があったと言いますが、現在では丸ごとの魚や鶏などは家で扱いません。万能包丁や小さめの牛刀だけで十分です。
出刃の種類、選び方
最後にかんたんに出刃包丁の選び方です。
鋼がいいか、ステンレスがいいか?
家庭用包丁は基本的には錆びないもの(厳密に言えば錆びにくいもの)を選ぶことをおすすめしています。錆びる鋼だと毎回水分をきちっとふき取らないとすぐに錆びてしまい、そのメンテナンスが面倒だからです。
ただ出刃包丁は毎日使うわけではないです。だからその時くらい包丁をちゃんと拭けばいい→鋼でいいという考え方はありだと思います。鋼は錆びにくい加工をしているステンレス・特殊鋼よりも安いからです。ただししっかり水分を拭きとらないと、たまにしか使わないゆえにまっ茶色になる可能性もあります。
使用頻度が高いなら逆に鋼の方がおすすめの場合もあります。魚をさばくことが多いと切れ味は結構落ちますし、小さな刃こぼれも多くなります(かぶと割りや骨をぶつ切りにしたりという硬いモノに当てる頻度にもよります)。そうなると当然研ぐ必要が出てくるわけですが、研ぎに関してはステンレス系より錆びる鋼の方が大抵やりやすいです。
サイズは?
家庭用として最初の一本を買うなら15~16㎝がおすすめです。私も調理学校入学時にセットで購入したのがこのサイズでしたが、初心者にはちょうどよいです。もし真鯛やカツオ、ワラサなどをさばくことがあってもこの大きさで大丈夫です。
初めてで18㎝以上だとだいぶ大きく、特に重く感じると思います。頻繁にある程度の大きさをさばくとか、よくアラを扱うという人以外は小さくて軽いものから慣れたほうがいいでしょう。
初めてだと普段使っている万能包丁と同じ刃渡り(刃の長さ)の出刃包丁がだいぶ重く感じるはずです。
出刃包丁は分厚いです。※薄い刃のタイプもあるにはあります。
まとめ
- 魚をさばく上で出刃包丁は必須ではない。
- プロが出刃包丁を使っている大きな理由のひとつは、扱う量が多いから。
- 買う前に、魚をさばく頻度、メンテナンス、片刃という3つの点を考慮。
- 出刃はプレゼントとしてはおすすめできない。
- 最初の一本は錆びにくい15~16㎝くらいがおすすめ。
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