以前HSPと料理に関する記事で”仕事としての適性はどうなのか”を書きました。
今回は”料理という家事×HSP”というテーマで書いてみます。
内容は「それができれば苦労しないよ」と言われそうな理想論かもしれません。ただHSPならではの苦手ポイントを克服し、HSPならではの強みを生かすヒントにでもなれば幸いです。
HSPが料理で苦戦する理由
私は料理やったことないのに高校の調理科に入ってしまったので調理実習中ずっと大混乱でした。
あらためてHSPはどうして料理が苦手なのでしょう。
私自身はこの2つでした。
- マルチタスクが苦手
- 失敗するとへこむ
そしてこの結果最悪なのは料理が嫌いになる、料理に苦手意識がでてしまうことです。これを避けられれば何とかなります。
マルチタスクが苦手にどう対処する?
まずはマルチタスクにしないというのがおすすめです。
1.最初は一品ずつ作る
最初は作るのは一品だけにします。特にはじめて作る料理がある場合。
それじゃあご飯にならないんじゃ…と思いますが大丈夫です。お惣菜や冷凍食品を使って献立しちゃいます。
例えばメインだけ作って、あとは買ってきたポテトサラダ、冷凍食品のお惣菜、トマトを切って添える、など。自炊って言うと1か0かみたいに考えがち(つまりどうせ作るなら全品手作りみたいになりがち)ですが1品だけつくればOK。
盛り付けは好きな人が多い気がするので、そこだけこだわればモチベーションも上がります。
一品になれたらレベルアップしていきましょう。
同時進行は最後にチャレンジ。
同時進行の場合は同じ下ごしらえの作業をまとめます。野菜を洗う、剥く、切る、茹でる、調味料などを準備する。
この時できるだけ単品で作ったことのある料理どうしを組み合わせます。はじめて作る料理を入れると混乱のもとです。
最近はミールキットが流行っているようなので、これを利用するのもいいかもしれません。あらかじめ切ってある食材を使えば段取りで混乱するのを避けられます。
2.時間には余裕を
少し慣れてきても複数料理をつくると思っていたより時間がかかることでしょう。
ああやっぱり私は遅いんだ、だめなんだ、と思って嫌いになりそうになるタイミングです。
ここで料理が嫌いにならないようにする方法としてはこんな感じです。
- 時間に余裕をもって始める、所要時間を思っているより1.5倍できれば2倍くらいにする。
- 忙しい場合はそれこそ一品だけ作ってあとは出来合いのものでいい。
- 何品作るか迷ったら一品減らしてしまうくらいでちょうどいい。
無理に時間をはやくしようとして失敗する、完成度が下がるっていうのは最悪です。それなら遅くてもいいからしっかり一つ一つの作業を進めます。
これを繰り返していく方がモチベーションを下げずに済みます。大丈夫です、繰り返していればいずれだれでもスピードアップします。
※スキマ時間ができるくらいでいい
レシピには「お湯を沸かす間に…」など書いてあるのでその通りにやろうとすると焦って混乱します。
自分のペースでよいです。どちらかというと少し待ってしまうくらいのタイミングがよいと思います。お湯の中で茹でられていく野菜を観察したりするのは意外と楽しかったり発見があったりします。
3.タイムスケジュールを書き出す
HSPが特にマルチタスクが苦手になるのは現場でいきなりやらされる場合。HSPは臨機応変が苦手です。
逆に言うとちゃんとすべての作戦があれば大丈夫です。つまり複数料理のすべての工程を一枚の紙にまとめます。
2品以上作るときはタイムスケジュールを書き出します。というと難しそうですが、レシピに書いてある「作り方」のそれぞれを一枚の紙に集約する(並列で書く)ことです。
簡単なメモで大丈夫。最初は2~3分かかるかもしれませんが、そのうち30秒とかで書けるようになるはずです。
HSPに限らずこれをやったほうがあとあと段取り力が伸びる、と思っています。ちなみに私が携わっていた学校給食などでは必ず工程表を作ります。役割分担と調理機器の確認のためですが、頭の中でさっと段取りを描けるようになり楽になりました。
時間が読めるようになる、限られた鍋を使いまわす、などできるようになるとマルチタスクが苦でないどころか楽しく感じられるようにいつかはなれます。
できれば洗い物の時間などを含めること。余裕を持ったタイムスケジュールが大事。早く次やらなきゃ…ではなくこれで予定通りなんだ、と言い聞かせるのも大事です。
ちなみに映画やアニメなどでは、つけ合わせを後から準備する(フライを揚げながらキャベツの千切りをするとか)的な演出がありますが、ああいう順番は基本やめておいたほうがいいです。付け合わせなど加熱しないものは前もってやっておくこと。
4.毎日作業する(洗い物だけでもいい)
最後は毎日少しでもいいからキッチンに立つことです。単品料理でもいいし、極論洗い物だけでもいいです。
以下理由です。
人間は突き詰めて言うとマルチタスクはできないそうです。最近読んだ本にたまたま出てきました。
自分では複数の作業の同時処理(マルチタスク)ができていると思い込んでいる人は多いようですが、実際には不可能であることが研究で立証されてます。
インターフェイスデザインの心理学 p120
ただしこの本では一つだけ例外があるとしています。
ただ、例外がひとつあり得ることが研究の結果わかっています。ごく頻繁に行ってきたため非常に得意になった肉体的な作業がある場合、その作業を行いながら同時に知的な作業をすることが可能なのです。
インターフェイスデザインの心理学 p120
例えば、大人なら「歩きながらしゃべる」ができます。
私の場合学校の調理実習ではいつもパニック状態でしたが、さすがに15年くらい調理の仕事をしてきたので今は大丈夫です。
2つの異なる作業ができるようになったのは”肉体的な作業”側がほぼ無意識にできるようになったからです。
- 肉体的な作業…切る、混ぜる、洗い物をする、など
- 知的な作業…他の料理の状況確認(目と耳)、段取りを整理しなおす、時間を読む、アレンジを考える
料理におけるマルチタスクというのは肉体的な作業をダブルで行なっているのではありません。
スムーズにいかない場合、肉体的な作業に慣れていないから知的な作業が止まってしまう、ということです。
家庭料理でも作業のほうを繰り返すことで無意識に近づけていくことができます。つまり慣れたらマルチタスクは苦ではなくなります。できるだけ毎日料理、というか作業しましょう。
無理に同時並行せずとも訓練にはなっているはずです。野菜を切るだけ、洗い物をするだけ、など単独作業でも体が覚えてくれます。そうなれば徐々に他のことを考えたり周りを見る余裕ができるでしょう。
”失敗するとへこむ”に対処する
料理は最初失敗が当たり前。
失敗続きだと自信喪失、挫折につながる…。
HSPで自己評価が厳しい人だと「まあこんなものだよね…」とはならないかもしれません。完璧に作りたい(完璧と言っても「プロレベルではなく自分の今のレベル的に」)です。
「そんなの次回につなげればいいじゃん、家だからいいじゃん」となればいいのですが、そうはならないです(以前の私)。
これどうすればいいのでしょう。
1.工程が一個しかないものを選ぶ
まずはそもそも失敗しにくいものを狙うのが一つの手かなと思っています。
ここで言う”失敗しにくい”はなんとなく簡単に作れそうなイメージという意味ではなく、失敗の原因が特定しやすいものという意味です。
具体的には焼くだけ、切るだけなど主な工程が一個しかないものを作る。これが失敗しにくいのはあらかじめ失敗しやすそうなポイントがパッとわかるから。
例えば、野菜を焼く(ポン酢をかけて食べる)とか。これなら最低でも焦がさないように気をつける、でよし。
工程がシンプルだと仮に失敗しても反省点が明確なので切り替えもラクです。
料理初心者だとイマイチのモノができてしまった時自己分析が苦手です。シンプルすぎるものなら「なにか違うなあ…なんとなくおいしくない…」という漠然としたもやもやを抱えずに済みます。
ちなみに私がふだん家で作る献立はシンプルです。一品だけ料理っぽいものを作ってあとは味噌汁。
副菜は野菜を切っただけ、焼いただけ、茹でただけなど。→味は食卓で好きな調味料でもかけてください方式。
毎日の料理って実はこれが一番飽きずにおいしい。現代は作りこまれたもののほうが外で買えるけど単純なものほど外で買えない&外食でも食べられないですし。
つい料理というと「名前のあるもの、料理した感があるもの」をやろうとしがちですが、これでいいんです。
2.たくさん味見する&味は薄めにする
食卓に並んだものが失敗でなければ失敗じゃない、という事実を最大限に利用します。
料理というのは途中で気づきさえすれば「取り返しのつかない失敗」というのはないものがほとんどです。お菓子とかはリカバリー不可ですが。
普通の家庭料理は単なる調整のミスがほとんどです。つまり加減。
で、初心者の失敗って味加減の場合が多いと思うのです。逆に言うと味加減さえミスらなければ家庭料理では大失敗とは言わない(ことにする)。
味つけを失敗しないためにはどうするか。これでもかというほど味見をします。煮物だったら途中で何回も食べちゃう。
味見しても大丈夫なようにたくさん作ることで失敗しにくくなります。(丸2~3口分くらい、1.5人分くらい多くてもよい)
このやり方は料理上達の上でもメリット大です。調理はこうやったらこうなるのか、という試行錯誤で上手くなるので一回の料理で何回分もの経験値を得られます。
味つけは濃くなったらリカバリーが難しいですが、薄い分には問題ありません。というか家庭の場合「薄い」と言われても失敗ではありません。「その料理は食卓で調味料を足して食べるものです」という話にすればよいです。
3.献立全体でリカバリーを可能にする
初心者はそれでも失敗するのは避けられません。その場合献立全体であらかじめリカバリーをはかります。言い換えると最悪全滅は避ける、成功が残るようにする。
これは何品も作ってしまう、例えばメインをダブルにしてしまうってこと。
上手くできたものが一個でもあればそこまでへこまずに済みますし、食べさせる人に悪いな…という罪悪感に苦しまずに済みます。
また冷凍食品などのストックを多めにすることでいつでも足したり代替したりできるようにするのもよいでしょう。
家事の話ではないですが仕事でこれ(各種ストックづくり)をやっていました。急に特注が入った場合、まかないを作るのさえきつい場合、などいろいろなパターンに対応できるように余分な在庫とパターンをストックしていました。
HSPの長所を生かす
最後に以下のHSPの長所を生かして料理を楽しむということに触れたいと思います。
- 創造力、深く考える
- 繊細さ
創造力、深く考える
HSPには何事につけ意味やテーマがあったほうがいいと思います。
といっても苦手なことの場合そこまで自力ではいけません。そこでまずはメンター(師匠)を見つけるっていうのは一つの方法かなと思います。
現在の料理本・料理研究家業界は、料理を哲学や生き方みたいな形で発信している人が多いです。つまり単なる作業や家事ではなく「食」の意味を考えようってこと。
有機野菜、自分の畑で取れたものを使う、調味料はシンプルなものにする、おかずは1品でいい、などいろいろな人がいます。本屋さんやAmazonをのぞいてみてください。直感で自分はこれだ、というのが見つかるかもしれません。
どんな料理哲学だとしても大抵「簡単」という要素は外していないので初心者でもたぶん大丈夫です。
深い意味が欲しいHSPにとってこの取り組み方はいいのではないかと思います。創造力も自分にマッチする特定の切り口があればどんどん湧き出てくるかもしれません。
特定の人にぞっこんになる必要はないですが、例えばある一定の期間は一つのテーマで取り組むと楽しめるのではないでしょうか。
※と言っておいてなんですが当の私自身は料理や食に全くこだわりは持っていません。たぶん現実的な飲食業界に身を置いてきたからです。
繊細さを活かす
あまり料理のレベルやスピードにこだわらないで、繊細さを活かすのもいいかもしれません。
例えば…
野菜の目利きを鍛える
繊細なので食材の違いが感じられます。これはそれこそシンプルな料理ほどよいです、茹でるだけ・焼くだけなど。そうすると複雑なマルチタスク料理をする必要もなくなるので一石二鳥。
盛り付けを楽しむ
目で楽しむ、楽しませる。お皿に作品をつくると思うとちょっと楽しんでやれそう。
献立を楽しむ
組み合わせで喜ばせる。食べる人の気持ちに立って考えるのは苦手じゃないはず。料理のレベルはそこそこでも献立の立て方で満足度は大きく変わります。
まとめ
”マルチタスクが苦手”への対策
- 最初は一品ずつ作る
- 時間には余裕を
- タイムスケジュールを書き出す
- 毎日作業する
”失敗するとへこむ”に対処する
- 工程が一個しかないものを選ぶ
- たくさん味見する&味は薄めにする
- 献立全体でリカバリーを可能にする
HSPの長所を生かす
- テーマを持って取り組む
- 繊細さを活かす(食材選びや盛り付け)
HSPが料理という家事にどう取り組むかを考えてみた記事でした。
ただ私の場合高校生から料理の勉強に入ってしまったので、”家事”として取り組み始めた経験はありません。ですのではじめて取り組む人には机上の空論みたいな内容になってしまった部分もあるかと思います。
ですが私自身料理には慣れたものの今もやはりマルチタスクは得意ではないです。毎日夕食を作っていますが、どうやればマルチの負担を減らせるかにはそこそここだわっています。同時進行はやれても疲れるのでやりたくないのです。記事中でも書いた通り、焼くだけとか茹でるだけというパターンもたくさん入れています。
家事としての料理は疲れ果てたり、ストレスを増やしたりしないようにすることが大切です。無理せずやれる範囲で取り組んでいきましょう。
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