私は肉のにおいが苦手です。具体的には特に脂身。「ウェッ」って吐きそうになります。
肉嫌いにもいろいろ理由があると思います。昭和だと絞め殺す場面を見てしまい心理的に苦手とか。あるいは食感や見た目が嫌いとか。
私の場合はそういう要素は無くて、明確に「におい」が苦手です。この記事ではこういう人間の感覚について書いてみようと思います。
とにかく脂身がだめ
肉のにおい嫌いにとって一番身近な敵は脂身です。
ロースとんかつやサーロインステーキの脂身は残すはめになります。そもそも脂身がついてくるメニューはあまり頼みませんが。
ラーメンに乗っているチャーシューは脂身以外の部分を慎重にかじります。この際誤って脂身を口に入れてしまうとウェッとなって危ないです。
スーパーの豚ロースなんかはなるべく脂身の小さいのをチョイスして、家で一枚一枚脂身を切り落とします。こま肉は安いですがあまり買えません。もし買った場合はこれまたチマチマと全脂身をカットしていく作業が発生します。
脂身以外の苦手なもの
脂身以外にもにおい的にダメなものがあります。
鳥皮、内臓系全般、特にフォアグラ、もつ鍋、焼き肉のホルモン系。このあたりは脂身と同等か大抵の場合それ以上にやばいです。
レバーは上記よりはマシなこともありますがやっぱりウェッと気持ち悪くなります。
脂身のない赤身部分なら基本大丈夫ですが、レアステーキやローストビーフのように赤い部分が残っているやつは微妙です。あるいは豚ヒレなんかは脂身がないという理由でチョイスしがちですが、獣臭い感じが強いとまた別の意味でウェッとなってしまってダメだったりすることがあります。
サラダチキンは気持ち悪くなるー茹と蒸は×
肉のにおいNGの原因としては調理法も関係あります。具体的には茹でと蒸し。
例えば私は鶏むね肉をよく食べますがサラダチキンは苦手です。コンビニなどの既製品は、スモークなら大丈夫ですがそれ以外はダメでした。ただ脂身のように反射的にウェッとなるほどではないです。一口、一切れくらいなら大丈夫ですが、何口か食べているとほぼ気持ち悪くなります。
他の例としては、すきやき、シューマイ、ロールキャベツ。これらはよほど質がいい肉でない限り大抵NGです。
贅沢と勘違いされがち
牛の焼き肉はフライパン焼きだとダメだけど、網焼きは大丈夫だったりします。脂が落ちてしまえばOK。だからホットプレートの焼き肉はだめで、網焼きの焼肉なら食べられるとか。炭ならよけいOKです。ただし安いチェーン店の肉だと赤身でもダメだったり。
けっきょく「贅沢だ」とか言われそうな条件になってしまいますが、別にそういうつもりはありません。一番いい条件でないと吐き気をもよおしてしまうというだけで、こちらとしては結構切実です。
肉に求める優先順位が違う
私は15年くらい調理師をしてきました。料理する人間としていつも劣等感や苦手意識を持ってしまうのが肉の扱い。
世の中の人が喜ぶ肉料理の特徴とは「しっとり」「やわらかい」「ジューシー」など。あるいはもっとレベルが上がると「噛まずに口の中でとろける」とかです。
ところが私にとってはこれらはあまり価値がありません。というか基本的にジューシーと評されるものは肉感が強すぎてあまり好きではありません。
私は一般の人が肉に求めているものを理解できていないので肉を扱いたくありません。私が肉に関しておいしいと思うものは一般的にみておいしくないようです。肉感が消えれば消えるほどおいしい(というか食べやすい)からです。
肉の価値が世間と正反対
私の場合肉の価値が世間一般と正反対です。
鶏肉>豚肉>牛肉
正直お得です。
また以下もあります。
赤身>霜降り
こちらもお得です。
普通レベルでにおいを許容できる人とは壁がある
肉のにおい嫌い。調理の仕事をしていたこともあって「どうしても理解し合えないんだなあ」というのを感じてきました。
例えば現場で「こうすればほらにおいが消えるだろう」とか言われても私にとっては消えていない、なんてことがありました。
あるいは仕入れの候補をみんなで味見して「この肉はくさみがない」とみんなが言っていても私にはそうは思えないとか。
おいしさの要素のうち「においの割合が高い」タイプ
調理師として多くの同僚と仕事してきた経験から考えると、「おいしい」の評価を決める際には旨味優先派とにおい優先派がいる気がします。
図にするとこんなイメージ。万人がおいしいまずいと思うものではない場合、どちらを優先して評価するかという感じです。
あるいは加点方式派と減点方式派と言ってもいいかもしれません。
私は「におい優先・減点方式」派なのだと思います。においに関してマイナス要素があったらその時点でダメ。逆にあまり旨味がなくても臭みがゼロならけっこうおいしいと判断します。
でもある先輩は正反対でした。臭みがあっても旨味が強ければおいしいと判断します。逆に臭みがゼロでも旨味がわかりやすくなければ「味がない」と言っていました。調理中だけでなく同じ店に食べに行って感想を話し合ったりしているうちに気づきました。ちなみにこれは肉だけでなく魚や野菜などについても同じでした。
そういえば私は卵のにおいが強いプリン、あるいは牛乳のにおいがするソフトクリームなども苦手です。私の周りの肉のにおいに敏感な人を考えてみると、私と同じように「おいしい」を決めている気がします。
肉好きが言う「これなら食べられる」は大抵NG
肉のにおいが苦手、の意味は肉好きには通じないようです。
私が人生で一番だまされてきた食材はモツです。モツ煮。なぜか何人かの人にモツ煮を「ここのは大丈夫」とか「おれが作ったやつは絶対食べられる」とかプッシュされてきました。「苦手だから食べられない」と言っているのに、そう言えば言うほどプッシュしてくる。
根負けして「じゃあちょっとだけ」と味見。ダメでした。「ウェッ」ってなるじゃないか。確かにそこまでプッシュするだけあって少しはマシな気もしましたが、生粋の内臓嫌いにとっては気休め程度です。100%無理が90%無理に軽減された程度。
肉好きの人に伝えたいです。あなたの言う「これなら苦手な人でも大丈夫」はほぼ間違いです。特に脂身やホルモンは基本無理な人には無理なのです。
一口に肉のにおいが苦手といっても程度や種類がある
私は3人兄弟で両親を入れると5人家族で育ちました。で、肉のにおいに敏感なのは母と妹と私の3人です。
ですがそれぞれ種類と程度が異なります。
まず妹は私以上に敏感で、苦手の程度が強いです。とんこつラーメンなどは店の前を通るだけでウェッとなるそうです。また焼肉屋にいくと肉なしでビビンバだけを食べています。
母は脂身は嫌いですが、蒸したり煮たりした肉は大丈夫でむしろ好んでいます。例えばシューマイやロールキャベツなどです。妹や私はひき肉を煮たものなどはウェッとなって食べられません。
このように同じ家族でも程度や種類が異なっています。
調理師が肉のにおいが苦手だと進路が狭い
私は調理師をそこそこ長い期間やってきました。調理する人間としては肉のにおいが苦手だと進路が限られてきます。まず焼き肉店やすきやき店、あるいは精肉などは地獄なので絶対避けます。あとは西洋料理。次点で中華料理。これらは進みにくいです。
対してやっぱり魚介が多い日本料理やイタリアン。だから私がかじったのはこの2つです。あとは鮮魚。
それ以外は給食などの集団調理系でしたが、がっつり肉!っていうほど肉だらけの料理ってあまりないです。脂身以外はそこまで苦労しませんでした。こま肉の脂身部分は除去して味見で済ませることができました。
ともかく肉が好きではない、というのは料理人としてはかなりマイナスです。
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