「おいしい給食」こんなにニヤニヤしながら見れたドラマはめずらしいです。と言っても普段ドラマはまったく見ないので放送期間中は存在を知らず、元日の一挙放送でやっと見れました。
せっかく観たのでこの記事では全献立をまとめています。元給食作ってた人視点での感想もつけてみました。ついでに学校や給食にまつわる「なつかしい」キーワードも各話まとめてみました。
全10話のメニューとコメント
1話「海の王者、鯨の竜田揚げ」
- 鯨の竜田揚げ
- せん切りキャベツ
- キャベツソテー(カレー味)
- 春雨スープ
- コッペパン、いちごジャム
- 牛乳
なつかしい
給食費(がなくなる)、伏せて挙手、牛乳瓶のふた(のミス)。
元調理員の感想
鯨の竜田揚げを噛む(噛み切る)音、よかった笑。世代が違うので食べたことも作ったこともないですが。給食でカレー味は何かと多いですね。ベーコンとも合います。
ちなみに食育という言葉、使われ始めたのは意外と古くて明治時代だそう。
あと実際には献立はそこまで緻密に計算されてはいないという…。昨年の記録を少しいじって使っている栄養士もいたり。でも甘利田先生はそう信じているっていう設定がこの後の絶妙な布石になっているんですよね。
2話「魔法の粉ミルメーク」
- ポークビーンズ
- ほうれん草のお浸し
- りんご
- コッペパン、マーガリン
- 牛乳、ミルメーク(いちご味)
なつかしい
土曜日の学校と避難訓練…からの帰宅、筋肉好きな体育教師、牛乳瓶のふた(を集める奴)。
元調理員の感想
ミルメーク(粉)はこのドラマではじめて知りました。
白いんげんの代わりに大豆…なるほど、そうだったのか。ほうれん草のおひたしのメンツが給食ならでは(人参、ほうれん草、もやし)。
3話「4番、サード、ソフトめん」
- ソフトめん
- ミートソース
- フレンチサラダ
- コッペパン
- 牛乳
なつかしい
健康診断(座高)
元調理員の感想
小学生の頃、ソフトめんがやっぱり一番好きでした。作る側に回ってからはもうなかったです…パスタも茹で上げて混ぜるし、中華麺の場合は回転釜で蒸すので大変でした。めんの日で自分が担当だとちょっとだけ腕(筋肉)に気合を入れていました。
4話「八宝菜に欠かせないもの」
- 八宝菜(うずらの卵別盛)
- フルーツポンチ
- コッペパン
- 牛乳
なつかしい
父兄(授業)参観日、読書感想文の発表
元調理員の感想
八宝菜。給食っぽさを出しつつ、崩れなく色もつやもおいしそうで良かったです。あんまりリアルな給食だと視覚だけではそそられないから。
とろみが戻ってしまう時間を逆算。これは本当です。調理員と最終判断する栄養士がベテランじゃないと、とろみ加減をちょっとミスることがあります。ちなみにルウの場合は反対で、少し冷めてかたくなるのを考慮に入れることがあります。給食は中途半端に冷めるという特殊な条件なのでここは経験値が求められます。
中華丼のようなメニューの日は副菜がほぼない(栄養的にいらない)パターンもあるあるですね。
個人的に一番笑った回でした。まさか授業参観(感想文)と走れメロスでこんなに笑えるとは。
5話「酢豚は大人の証」
- 酢豚
- もやしの中華サラダ
- 中華スープ
- コッペパン
- 牛乳
なつかしい
写生
元調理員の感想
ピーマンは混ぜてあるパターンみたいでしたが、最近は変色を防ぐために別茹でして別盛にするパターンも多いです。なお調理員サイドは大変になるのでなんでも混ぜたがります(食缶が増えるから)。
パイナップル。甘利田先生の、なんとしても給食を否定したくないっていう反応が絶妙すぎて最高でした。酢豚にパイナップルが入った起源は勉強になりました。
この回も前回に続いて特に笑えました。一組の生徒と神野くんの絵に爆笑。
6話「ワンタンスープと名前の長いパン」
- ワンタンスープ
- 白身魚のフライ(タルタルソース、キャベツのせん切り、ミニトマト)
- ポテトサラダ
- コッペパン
- 牛乳
なつかしい
ドッジボール
元調理員の感想
メルルーサ、大量調理をやっていないと身近じゃない魚、そしてたしかにロボットっぽくて強そうw。献立だと「白身魚」にしていることが多いですよね。私の現場では「ホキ」もけっこうありました。※調べたらホキは高価になっているらしいですね。
白身魚のフライの噛む音。給食っぽさが出てました。給食では必ずドロ(小麦粉、水を混ぜたもの)を使うので衣が厚くなるし、じっくり揚げていくのでかためになりますね。
ワンタン。実際の給食だと食缶の中だけでもっと溶けることが多いですが、「ほぼ溶けかかっているワンタン」と言葉で表現していたのもよかったです。相変わらずみせ方が上手い。
シンプルメルルーササンドとポテトメルルーササンドwからのエッグポテトオニオンメルルーササンドwネーミングに爆笑。吹奏楽の下手さも爆笑…からのラストがしみじみな回でした。
7話「ヤキソバ・パンデミック」
- 焼きそば
- ワカメスープ
- コッペパン
- 牛乳
- バナナ
なつかしい
理科の解剖、家庭科の調理実習
元調理員の感想
焼きそば。上に具材を載せてきれいに撮ったなあ。
回転釜のため一本一本が短くなる、やわらかい、別物になるっていうのはほんとそうですね。学校給食の場合、蒸して温度を上げてから具材と混ぜます。そのため柔らかさは避けられませんが、長さについてはけっこう作る人によって差が出ます。蒸し加減と混ぜ方が上手い人だと圧倒的に切れていないものができたりします。(混ぜ方が本当に上手い人は「力まかせ」にしないので、ジャーマンポテトとかもほとんど崩さずに均一に混ぜることができます。)
ちなみに学校給食の制約がない大量調理現場では袋に入れたまま蒸していました。こうすると蒸しの段階で余計な水分が入らないので、歯ごたえあり・ちぎれずに作れます。
甘利田先生(市原隼人)の演技の幅が見れた回でした。
8話「危険な果実 冷凍ミカン」
- ポタージュスープ
- コロッケ(キャベツのせん切り)
- コッペパン
- 牛乳
- 冷凍みかん
なつかしい
交通教室、おかわりじゃんけん
元調理員の感想
冷凍みかんは単に凍らせればいいと思ってた人なので勉強になりました。さすがにそこまでカチカチの冷凍ミカンはなかったなと思いましたけど、たしかに小学生の頃むけなかった時があった気もする。
ポタージュとコロッケは両方とも新人調理員だと失敗しかねない(焦げと破裂)献立のセットです。
9話「アゲパンという名のスイーツ」
- カレーシチュー
- アゲパン(砂糖)
- ちくわの磯部揚げ
- プロセスチーズ
- 牛乳
なつかしい
三者面談
元調理員の感想
アゲパン完成の話も知れてよかったです。私の作っていたときもアゲパンはいろんな味でやってました。ココア、きな粉…。「粉雪アゲパン」っていう冬にぴったりなおしゃれネーミングもありました。まあ粉砂糖とグラニュー糖なんですけど。
こぼれた瞬間のシーンは全話の中でも一番爆笑でした。ただこぼれただけなのに。BGMとか演出とか上手すぎ。
10話「二人だけのカレーライス 最終話」
- カレー
- 米飯
- 一口カツ
- りんご
- 牛乳
なつかしい
朝礼(と貧血)
元調理員の感想
今は当たり前だけどごはんが出るようになったという過渡期だったんですね。
私が給食を食べていた90年代は、週2~3がパンという割合でした。その後2000年代で作る側だった頃にはもう週4でご飯。残りは主に麺で、パンは月に1~2度くらい。ずいぶん変わりました。
最終話最後の会話「カレーはカレーだな」「りんごやるからカツくれ」。二人の関係や甘利田先生の変化が描かれていて素敵な終わり方でした。
全話通して観た感想
ここ数年テレビドラマなんて通して観たことがなかった私ですが完全にはまりました。衝(笑)撃作。無料公開があった一話と十話は5回ずつくらいリピしましたw。
昔っぽい教育の現場、個性的な先生像も時代を反映していて〇。個人的に甘利田先生の干渉しすぎないスタイル好き。
舞台は80年代ですが私が小学生だった90年代前半もかなり近い雰囲気でした。食器はアルマイトではなく黄色一色のプラスチックでしたが、やはりまだ先割れスプーン。牛乳瓶のふた集めてましたし。
いろいろさじ加減が好みでした。毎回ちょっとした料理のうんちく、くすっと笑える場面などが本当に絶妙な割合で散りばめられていて。
何よりも他の学園ドラマみたいに生徒のドロドロした問題とかがまったく起きないのがいいです。中学生=SNSという今を舞台にしたらきっとこうはできないんだろうなあ…
あと演技。市原隼人はヤンキー役のイメージしかなかったので演技力の高さにびっくり。一気に好きな役者さんになりました。中学生役含め全員がとてもうまくて最高でした。
最終話まで失速することなく笑わせてもらいました。3月の劇場版が今からとても楽しみです。
コメント
コメント一覧 (2件)
本日、テレビで劇場版「おいしい給食」を見て、おもしろくてサイトを探していてここにたどり着きました。元調理員さん目線、いいですね!ドラマは見てないですが想像して笑いました。
学校の栄養教諭をしております。
昔はわかりませんが、今は厳密に栄養計算してますよ。ただ、1週間でならしてます。パンの日、麺の日、ごはんの日、和洋中ではどうしても栄養価も規定からずれますし。その分どんなメニューが脂が多いか、塩分高めかとか、その辺は食育指導でまかないます。
調理員さんとの二人三脚で成り立つ学校給食。これからも子供たちのために頑張りたいと改めて思いました!
>ともさん
プロの方からのコメントうれしいです。
私も劇場版はこの記事を書いた後に観ましておもしろかったです。
栄養計算の件、そうなのですね。私も栄養士の実務は知らず、現場で見聞きしたことをもとにしてしまったので失礼しました。
ちなみに記事中の「実際には献立は緻密に計算されてはいない」というのは…
いかにもな数学教師である甘利田先生の「献立は…それこそ針の穴を通すような微妙な計算のもとに成り立っている」というセリフに対してのツッコミで書いてしまいました。さすがにそこまでではないかな…という。
現役時代、栄養士の方を見ていて献立だけでなく衛生、食育、発注業務、各方面の折衝、その他もろもろ…よくやっておられると思っていました。これからも子供たちのためにがんばってください。