以前「将来AIやロボット化によって消える職業」が話題になりました。
学校給食はどうなのでしょうか。給食経験者としてはいろいろな給食や調理の中でも学校給食は一番なくなりにくいと考えています。
その理由を書きたいと思います。※AIとかロボットとかそういう業界のことは知らない素人のたわごとです。
日本の学校給食は海外のそれとは違う
調理から配膳まで完全にロボット化された食堂が存在する時代。給食調理員も不要な時代がすぐそこまで来ているように感じるかもしれません。
ただ「将来AIやロボット化によって消える職業」などの研究・仮説は大抵海外(世界基準)のものです。海外の学者は日本の手作り給食や食育への力の入れ方を考慮していないはずです。※ちなみに日本の給食は海外で評価が高いです。
日本の給食は欧米のそれとは違います。土地や季節の食材を取り入れて毎日献立が変わります。アレルギー対応などもあります。決まったメニューをこなすチェーンのレストランよりもよほど人間でないとできない部分が多いです。これらを自動化することはできません。特に毎日異なる食材・メニューがシステム化できません。
一方多くの欧米の給食はスタイルからして違います。アメリカで多いのは好きなものを自分でチョイスして食べるスタイルです。つまり運営側は毎日ほぼ同じものを用意して並べればいいわけです。既製品が主であることも多いです。
このスタイルをモデルにして「将来なくなる仕事」と言う人もいるのは当然です。※この場合そもそも日本の給食などで言う「調理員」ではないですが。温めたりする人間の作業員がいらなくなる程度のこと。
ただ日本でも学校給食以外の「給食」は”ほぼロボット化”は視野に入りつつあると思います。つまり既製品を温めたり、冷凍のカット野菜を使ったりするものです。施設の高齢者向けの食事などに多いパターンです。
学校給食はルーティンワークなのか
AIやロボット化が進んでもなくならない仕事の特徴の一つは、ルーティンワークではないという点です。学校給食調理員の仕事はルーティンワークな点とそうでない点があります。
毎日異なる食材で異なるメニューをつくるという点が後者で、これにより人間でないとできない位置を確保できます。
一方前者、つまりルーティンワークな点はすでに機械化がかなりすすんでいます。特定の食材の処理や特定の加熱調理です。例えば下処理では皮むき器であったり、加熱では連続フライヤーやスチコンなどです。こういったポイントになる部分はすでに機械化がすすめられています。
こういった機械化が調理工程全体に及び全自動ロボット化することは今のところ考えられません。毎回スタート(材料)とゴール(献立)が違いすぎるからです。したがって調理員が不要になるということはありません。
ただピンポイントでの機械化や機械による補助が進むほど人間の経験値(ベテラン調理員)の価値が下がるのは事実です。単に作業スピードもそうですし、センサー技術のさらなる発達やビッグデータ化などもあります。したがって無くなる仕事ではないものの将来性は今と同じかそれ以上に低いとは思っています。
給食に対するAI等の影響
今後も学校給食はAIやIoTやその他の影響を受けていくと思いますが、それは比較的小さな点かなと思います。
例えば献立や調理関係の情報をデータベース化して全国や地方で共有するとか、一部の食材の下処理を一括で行なってから納品するとか。食材の品質管理や味付けを見える化(センサーやビッグデータ等)して補助してもらうとか。
そこまで進んだとして、やはり学校給食はあらゆる調理・飲食業の中でもっとも人間でないと難しいジャンルとして残ると思います。理由は先に書いた通りで、スタートとゴールが毎日違いすぎて全工程を自動化など不可能だからです。
もし仮に学校給食調理員の仕事がなくなる時代がくるとしたら、その時には超一流あるいは超クリエイティブな料理人をのぞくほぼすべての料理人が不要になるときかと思います。
学校給食栄養士もなくならないはずです。例えば献立作成にAIを活用しても完全に代替はできません。食育や地産地消もありますし、仕入れ業者の選定・やり取りなど人間がいないと困る業務だらけです。子ども相手のアレルギー対応もあります。※なお栄養士や教員は「AIに奪われにくい仕事」に入っていたりします。
ただし日本の学校給食のあり方が変わることでその仕事がなくなるという可能性はあると思います。つまり高校の学食のようなスタイルになるとか、給食制度自体が廃止になるとか。今のところはこちらの可能性も低いとは思いますが、AIや自動化によって仕事がなくなるという話よりは制度側の問題で無くなるほうがまだ現実的かなと思います。
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