私は10代から調理の仕事をしてきましたが、30代後半でWebデザイナーに転職しました。
30歳くらいまでの異業種転職は珍しくないですが、30代後半以降になるとやや珍しいほうだと思います。同じように30代以降で調理・飲食業界からITやWebへの転職を考えている方の参考になればと思い記事にすることにしました。
Web系に転職してよかったこと・大変さ
調理・飲食業界からWeb業界に転職してよかったことです。
- いちおう定時という概念がある
- 休みはカレンダーと同じ(土日祝 120日以上+有休消化可能)
- 仕事の仕方(休憩や集中度合いなど一日の過ごし方が自由)
- 座り仕事(やはり体力的に立ち仕事の方がハード)
- 人間関係がラク(基本一人仕事)
飲食や調理系は定時という概念自体がないような会社もありました。休みも基本の設定が少ない(80日前後~108日など)ところが多かったので、120日以上あって有休も消化可能というのは恵まれていると感じます。※もっともWeb系でも超ブラックな会社もあると思いますが。
これ以外はその人の性格や適性によると思います。一番感じているのは、厨房は毎日一分一秒勝負でしたがクリエイティブ系は時間の使い方が大きくて自由なこと。この辺が自分に合っていてよかったなと思っています。
転職して気づいた大変さ
もちろん楽なことやよかったことばかりではありません。
- 座り仕事もつらい(という面がある)
- 頭脳労働つらい(という面がある)
- 納期に追われる
足や体が疲れない代わりに慢性的な頭痛や目の痛みに悩まされます。座りっぱなしなので肩こりや腰にくる時があります。
技術的な問題が解決できないとか、納期に間に合わなそうというプレッシャーでやばい時があります。設計やデザインへのダメ出しなどで方向性を見失ったときなどは休みの日まで八方ふさがりの気分です。
比べると調理・飲食はつらい職場でもその日一日で必ず終わる仕事でした。常にあくせく追われクレームもありますが、基本的にその場限りで終わります。その辺はよかったんだなと転職して気づきました。
書いていたら総じてWeb業界で働く方が大変な気もしてきました。まあそもそも大変さの種類が正反対なので「どちらの方が」という結論は出せないのですが。でも私は自分の性格に合っているという意味ではWebデザインの仕事に転職してよかったです。
Web業界を目指した理由(おすすめの理由)
以下一般的にWeb業界がおすすめの理由です。
- 2020年代に入ってもWebの伸びしろはまだまだある、むしろ本格化
- 特にエンジニアは常に需要大
- 不安定な世の中で比較的安定している(最近だと新型コロナの影響等)
- 仮に別業界に移ることになっても身につけた情報発信スキルは無駄にならない
- 学歴に関わらずだれでも努力次第でいける
- 自宅で本職なみの勉強も可能(料理や接客ではこれは難しい)
- リスクゼロの副業がしやすい
上記のほとんどは私自身Web業界未経験の時点で憧れを持った理由、転職の動機になったことです。
一番大きいのはWebや情報の時代なので身につけたことが無駄にならないという点です。情報発信スキルはもし将来さらに異業種へ移ったり飲食業界に戻ったりしても活かすことができます。
ただ技術的な面は非常に移り変わりがはやい世界なので、もしかしたら今やっていることは数年後にはほとんど役に立たない可能性はあります。でも基本は変わりませんし経験は決して無駄にならないと思っています。
Web系の収入と将来性
私の場合転職後の収入は調理・飲食業界にいたときとそれほど変わっていません。Webデザイナーは特別な技能もいりませんし、能力関係なく努力次第で誰でもなれるので高収入は期待できません。また未経験者が中途で入れる中小企業は収入的にもそこそこというのもあります。
ただフリーランスや副業などを視野に入れるとまた話は違ってきます。これは飲食の独立と同じです。
エンジニアは収入・将来性の点でおすすめです。ただしハードルが高いです。
とりあえずなんの職種でもいいからIT・Web業界に入ってしまうという考え方もあります。私なども特にデザインに興味があったわけではありません。ただデザイナーが一番ハードルが低かったので結果的に(とりあえず)そうなっただけです。最初のころはできたらエンジニア方向に移行していきたいと思った時期もありました。でも頭脳的に無理でした。デザインのほうがまだ興味を持てました。
以下具体的に転職した経緯やどこが大変だったかを書いていきます。
調理師からWeb制作者に転職した流れ
私は特にPCやWebに詳しいとかいうことはなく全くの素人でした。仕事の経験は調理飲食のみ。PCスキルはなし、発注などでExcelを使用したことがある程度でした。HTMLやPhotoshopなども全くの未経験。美術やデザインなどのスキルもなしでした(むしろセンスは平均以下と思われ…)。
流れ
IT系企業にWebデザイナーとして就職しましたがその概略です。
- 退職
- 職業訓練6か月
- 卒業後2か月間ポートフォリオ作成や独学、クラウドソーシングで実績づくり
- 就職(勉強開始から8か月後)
Web系は職業訓練がけっこうあるのでそれを受講しました。しかし単に学校を卒業したというだけでは難しく3.のような作品や実績づくりに時間を要しました。
職業訓練と他の勉強の方法
Web系に転職するための学習は大きく以下のように分かれます。
- ハロワ職業訓練(無料)…失業中なら〇
- 民間通学講座(有料)
- 通信講座(有料)…就業中なら〇
- 独学(無料~リーズナブル)
私は退職後かつ費用がかけられなかったので1.の職業訓練でした。働きながらということであればこれは選べないので、3.通信講座が有力になります。
以下一つずつ簡単にまとめました。
ハロワ職業訓練
私はこのハローワークから職業訓練という手段を取りました。ただ正直それだけでは難しいです。少なくとも自分で勉強する量の方が多いくらいでないと就職戦線の入り口にも立てません。
辛口に言えば講師のほとんどは非正規でレベルが高い人材は集まらない仕組みです。私のクラスの講師も人に教えた経験がないのではないかと思えるほどひどかったです。制作の学習は手を動かしてなんぼだと思うのですが、教科書をただ読むだけという時間が多かったです。
また実際に就職する気のない主婦なども多く、そういったモチベーションが低い人でもついていけるように授業が行われるので優秀な人ほど伸びなやむと思います。
民間の通学講座
民間の通学講座という手もあります。この方法でネックになるのは費用と時間です。よほど貯蓄など余裕がない限り、数か月働かずに出費だけがかさむというのは厳しいでしょう。ただそれが捻出できるなら一番いい選択肢だと思います。
一番大きいのは就職支援の手厚さです。企業側から声がかかるのでそのルートで就職するという手が使えます。ある意味授業料を払って就職の切符を買うような方法です。もっともこれが通用するのは20代までと思います。
もう一つの大きなポイントは学習時の環境です。やはり無料の職業訓練に比べれば講師のレベル、生徒のモチベーションは高めのはずです。
通信講座
Webの学習と相性がよい通信講座という手も有力です。特に働きながら学習できるというのは大きいです。
私も就職後にAdobe(Web制作の基本)を学生版で購入するために受講しました。少なくとも職業訓練の授業よりは優れていました。
ただし自宅で講座を受けるということは時間を監督してくれる人も仲間もいません。モチベーション維持がネックとなります。
続けることに自信がない人は、質問サービスやマンツーマンのサポート体制、就職支援などが充実している講座を選ぶことでそういった弱点を補うのが大切です。
独学
完全独学という方法もあり、これはなにより費用が抑えられるのがメリットです。
書籍のみで独学は難しいですが、幸い今はYouTube等で高クオリティの動画を見つけることもできます。ちなみにPhotoshop(画像編集)などの操作はAdobe社の公式動画だけでも十分可能です。
独学のネックの一つは未経験の時点で自分と相性がよい情報を見極めなければならないことです。またピンポイントでは優秀な情報でも講座というパッケージにはなっていないので、自分で必要な情報をチョイスして網羅する難しさもあります。
Web制作の勉強自体は難しいわけではないので、優秀な人なら自分で情報を集めても十分にマスターできます。ただし独学の最大のネックは就職時に評価されにくいことです。一種の学歴フィルターとして、未経験でも職業訓練卒や通信講座受講以上などで線引きされることが多いです。
「独学でマスターしました」という人の方が優秀とも言えますが、それが本当かはわかりません。本人の勘違いやハッタリかもしれないです。ということで「形だけでもカリキュラムを終えた人」の方が採用時に評価されてしまうという事実があります。
転職の難易度・大変だったこと
私は先述のとおり職業訓練というルートだったので、卒業後約2か月の準備期間がかかりました。ただ「授業を受けて卒業しました」では基本的に無理だったからです。50社以上落ちました。特に最初のころは工夫が足りなかったので100%書類選考で落ちていました。その後スキルの証明と実績を作ることで面接に行けるようになり、ようやく内定をもらうことができました。
このようにWeb系の就職でのポイントは、スキルの証明や実績作りになります。
これは「ポートフォリオ」という紙媒体やWeb媒体の作品集を作ることで行ないます。これにはその人の力や得意分野、センスなどが表れるので履歴書よりも重視されます。未経験の場合は、学校の課題で作ったものや自分で練習として作ったものを載せることが多いです。
ただし学校の課題や練習で作ったものを載せるだけではあまり評価されません。そこで実際にお金が発生する案件を仕事として行いました。クラウドソーシングで受注するという方法です。ただし未経験者はいきなり契約などしてもらえないので、コンペという形で作品を提案していきます。私はそういったお金が発生した作品を実績にすることでようやく就職面接を突破することができました。
上記のようにある程度年齢がいった人間がWeb制作へ転職をする場合は時間がかかります。
もっともWeb系という広い範囲で言えば、転職前に必ず作品集や時間が必要なわけではありません。営業や運営系などもあるからです。
ということで最後に飲食系から転職可能なWeb系の職種例を簡単にまとめました。
IT/Web業界の職種まとめ
飲食経験者のスキルはIT業界で評価される点が少なくありません。コミュニケーション能力、社内の調整能力、リーダーシップなどなどです。私自身飲食からIT業界へ行ったので感じるのですが、ITの技術系はこの辺苦手な人も多いです。
ですので飲食からの転職を考える場合、基本的には技術以外の点での評価を求めるほうが成功しやすいと思います。もちろん基礎知識や基礎技術は必要ですが、転職組の主な売りはそこではありません。
営業
おすすめのタイプ →成果を出したい。コミュ力に自信。
対人コミュニケーションが身についている飲食経験者には一番チャンスでありチャレンジしやすい職種の一つです。
Webディレクター
おすすめのタイプ →折衝したり人をまとめるのが好き。万能型。管理職経験あり。
Web制作プロジェクトの進行役・管理役です。デザイナーやエンジニアへの指示出し、クライアントの要望確認や提案などが仕事です。
比較的高収入なのがおすすめポイントです。その反面社内外での折衝などストレスの多いポジションでもあります。飲食業経験者でコミュニケーションスキルに自信があれば一番おすすめです。基本的に若いほど転職は有利と言われますが、このディレクターだけは例外なのもポイントです。経験浅な20代よりも店長など管理職経験が豊富な30代以降の方が選考で有利なこともあるほどです。
Webデザイナー
おすすめのタイプ →黙々と作りたい。接客や管理より料理自体が好きだった。
Webページ等の設計・デザインや画像の補正などが仕事になります。
収入はそれほど期待できませんが、対人系のストレスが少なめなのがいいです。料理を作る楽しさを知っている人ならモノづくりの楽しさという点で近いやりがいも味わえます。
また私自身やっているのでやや自虐的ですが”ギリ技術職扱い”という敷居の低さが狙い目です。
Webエンジニア
おすすめのタイプ →高収入を目指したい。論理的に考えたい。
収入面と安定面では一番おすすめです。
ただ一口にエンジニアと言ってもさまざまなので、引く手あまたのレベルになるには勉強なども難しいです(少なくとも私にとってはとても難しく感じます)。
ITエンジニアは需要が高いので売り手市場と言われています。が移り変わりがはやい世界なのでずっと精進していないとすぐに時代に取り残されそうな感じもあります。
Web系の職種はそれぞれがどこまで担当するのかあいまいなことも多いです。
私自身Webデザイナーという肩書きで入りましたが、ディレクターの仕事もエンジニア寄りのこともやっています。
動画クリエイター
おすすめのタイプ →トレンドに敏感な人。文字より映像。
YouTubeなどでもわかるように需要が高く、5Gでさらに本格化するとも言われています。技術やセンスを磨けば高収入も目指せます。
ただツールは誰でも扱えるようになっている時代なので、競争も激しくただ作れるというだけでは難しそうです。
ライター
おすすめのタイプ →文章を書くのが好き。言葉で表現したい。
ライターは文章を書く仕事なので誰でもなれそうですが、個人的にはある意味一番難しいと感じます。いわゆる「だれでもできることをだれにもできないレベルでできる」タイプのプロだからです。
ただ安定して稼ぐというところまでは目指さず副業で、というのなら一番チャレンジしやすいです。
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安定を目指すならネットワークエンジニアがいいです。インフラ系は需要も安定していますし未経験でも行ける職種の一つです。職業訓練もあります。
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